Q4. なぜ教官が少ない?

西守 騎世将の考えと答え…今まで民間で育てて来なかったから。

操縦教育証明を持った教官が少ないのは、『なかなか取らせない』という業界の凝り固まった体質がまずある、と感じています。『そうカンタンには取らせない』という、何だかもったいぶった感が漂っていますね…
また、教官資格はビギナーを教えるのに必要な資格ですが、航空機運航会社にとってみれば操縦訓練よりも、もっと単価の高くて利益率の良い仕事を優先するのが当たり前ですから、航空機1機、教官1人を占有する操縦訓練はあまり手を伸ばしたくない事業でしょう。
だからその運航会社でも教官資格が無くても、もっと他の割の良い仕事が出来るし、そもそも教官資格を取る必要がない。
むしろ『自家用資格を取りたい』と門を叩いても、『自家用は海外で取っておいで』、と門前払いするところも実際にあります。こう言った、いわば“怠慢”な姿勢もあるんです。

自衛隊なんかは隊員に教育しなくちゃいけませんから、隊で選ばれたパイロットに操縦教育証明を取らせます。でもそれは『自衛隊内で教えるため』であって、民間の訓練生は教わることができません。そういう教官たちが民間で教育できるのは自衛隊を退職してから。民間のフライトスクールの教官で『元・自衛隊』という人が多いのはこれが理由です。だからいつまで経っても民間で育った教官がいない…こんな時代がずっと続いていました。

アメリカでは、フライトインストラクターがそれはそれは沢山います。僕もアメリカのインストラクター資格を持ってますよ。とにかくインストラクターはたくさんいます。
なぜならアメリカでは、フライトインストラクターは『プロへの登竜門』という考えがあるからです。つまり、はじめにインストラクターになり、経験と飛行時間を積み、学んでからあらためて本当のプロの世界に入る、というシステムなんです。
でも日本は、経験と知識を積んだ者が『教官』という、逆の考えがあるようですね。
ですから時々、『何百時間または千時間以上というすごい経験が無いと、受けさせてもらえないんですよね?』って質問を受けます。
そんなことないですよ。『Q2.』で答えた通り、150時間以上の事業用資格を受験できる経歴があれば、自家用資格であっても受験出来ます。
その真意はわかりませんが、過去、現場の教官達の誰かがそう言っていたのでしょうね…
もちろん人を育てる、パイロットの基礎を作る大切な資格ですから、半端な姿勢では受かりません。
でも、そんなにもったいぶる必要も無いです。
僕はそう思います。


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